2017年1月23日月曜日

日本人とタラウマラ族(メキシコ)は同じ祖先

驚くべきことに、走る民族として有名なタラウマラ族と日本人は、祖先が共通(共通の遺伝子を持っている)であることが研究で分かっています(後述)。

ところで、なぜ人間は走るのでしょうか。

ランナーの間でとても有名な本、「Born to run:走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”」( 2010年 、クリストファー・マクドゥーガル)は、その疑問に対して、インパクトある考えを示しました。

1)人の身体の構造を調べると、長距離をうまく走ることが出来るように進化してきた。

2)他の動物と比較しても、人間は長距離走を最も得意とする生き物。

3)人間の祖先は、一日中獲物がバテるまで追いかけて、獲物を捕らえることが出来た。

4)現代のランニングシューズは人工的なクッションが過剰で、かえって人間本来の脚のばねや走り方を邪魔する。現代人ランナーに多いひざなどのケガを生む原因となっている。


メキシコの走る民族 タラウマラ族 
(写真 三田正明氏 Trail HP参照)

上の写真は、この本の中で紹介されて一躍有名になった ”人類最強の走る民族”のタラウマラ族の写真です。後に、NHKの番組「地球イチバン」でも紹介されて、多くの日本人がその存在を知ることになります。

彼らはどこか古き日本人に似ていて、無口でシャイな性格です。攻撃的ではなくどちらかと言えば守備的な性格の民族です。

メキシコのグランドキャニオンと呼ばれる「コッパーキャニオン(銅渓谷)」。標高2,000mをこえる渓谷の奥の奥地に隠れ住むタラウマラ族は、自らを “ ララムリ(走る民)” と呼びます。

彼らは男も女も、普段着の民族衣装のままで、すごい長距離を何時間も走ることが出来ます。日本の草履(ぞうり)に似ているぺったんこの「ワラッチ」という履物(日本のわらじと言葉が似ています)だけで山道を見事に走ります。

彼らは競技のためではなく生活のために走ります。タラウマラ族の先祖は、攻撃的な迫害者から逃れるために、たとえ夜中でも長く走れる能力を、生活や祭りの中でみがいてきたのです。

だから、彼らは50歳を過ぎても100km以上走れる“健脚”を持ち、大人も子どもも、夜通し走り続けるという、興味深い祭りを400年もの間続けているようです。

米国のジャーナリストは、欧米の有名なウルトラランナー達とどちらが速いか、競争させました。その結果、タラウマラ族の参加者達は、最新の科学知識でトレーニングする世界のトップアスリート達と互角に戦えることがわかりました。

しかし、タラウマラ族にとって本来走ることは生活であり、スポーツ競技とは意味が違います。彼らは生活費の足しに、レースにも参加するようになりましたが、それは彼らの本来の走りではなく、どちらかというと見せ物的な生活費稼ぎの走りとなりました。やはり同じ土俵での勝負は難しいと思います。

でも世界のジャーナリスト達は大事な成果も得ました。人間は他のどの動物よりも、長距離を走ることに適している。そのことを、タラウマラ族は見事に実証してくれたことです。

それと、長距離を走るのに西欧的な栄養食品は必ずしも必要なく、彼らの質素な日常食である豆や穀物や発酵食だけで充分だったということを見事に実証したことです。

実は、昔の日本人も、わらじを履き、米、佃煮、味噌、梅干しのような、穀物と豆と発酵食品中心の質素な食品だけで、江戸と京都・大阪間を生活のために走って仕事をしていたのです。

江戸時代、日本の郵便を運ぶ「飛脚」や「人力車の人夫」達も、百キロ以上を普通に走れたようです。昔の日本人の脚力は、タラウマラ族に匹敵したのです。

葛飾北斎かつしかほくさい)の浮世絵には、
当時の飛脚の様子が描かれている
タラウマラ族と昔の日本人の生活から、走る為の「必要な栄養とは何か?」、「昔から人が走り続けてきた意味は何か?」という基本を考えさせられます。

なお、冒頭に日本人とタラウマラ族は祖先が共通であると書きました。ご興味のある方は、、以下の研究論文を参照してください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mhc/21/1/21_37/_pdf

この論文を読むと、以下のことがわかります。

1)各民族のHLA遺伝子多型を調査した結果、初期の日本人は、中国や朝鮮半島では見出されない遺伝子型を持っていた。

2)その古来の日本人が持つ遺伝子型は、日本人以外では、台湾のヤミ族、アラスカのユピック族、中央アメリカンインディアン(メキシコ先住民のタラウマラ族)などが同じく持っていた。

ずっと以前の地球では、日本列島とアメリカ大陸の北側は陸地続きだったので納得です。

つまり、ヤミ族、ユピック族、タラウマラ族などと、初期の日本人の祖先は共通の部分があることを示しています。


【余談】
以前、日本人はアジア諸国の中ではダントツに理系が強い特徴を持つ人種だと書きました。
https://otonano-kodaishi.blogspot.jp/2015/08/blog-post_27.html
実は、マラソンにおいても、日本人はアジアでダントツに強い記録を残しています。

世界歴代記録10傑に入っているアジア人は日本人だけです(野口みずき選手) (後記:2018〜2019年に新記録が6名も増え2019年現在12位)。
http://www.tsmt-k.com/worldracewoman.html

また、アジア歴代記録10傑の記録には、男女とも7人が日本人で占められています。
人口比率も考慮すれば、日本人がいかに長距離に強いかわかります。

なお、同じアジアでも、中国や韓国の選手は過去にはマラソンで活躍した選手はとても少ないです。

中国や韓国は地理的には日本と近いのですが、祖先(DNA)が違うので、性格も違うし、文化も違うし、スポーツの得意、不得意の分野もおのずと違うのでしょう。




2017年1月21日土曜日

心停止はフルマラソンに多い

前回、精神的な達成感を目指すなら「一生に一度はフルマラソン完走」と書きました。

今回は、少し視点を変えます。
現代人の日々の健康の目的ならば、どんなマラソン大会を目指すのが良いでしょうか?

答えは、ずばり、10Km走大会もしくはハーフマラソン(約21Km)大会狙いです。


【理由1】 
時々ニュースで報道されるマラソン大会での心停止事故です。心停止はフルマラソンで、残りの距離が1/4以降で多発するようです。 一方で、フルマラソンに比べハーフマラソンは有意差をもって心停止が少なく、比較的安全であることがわかっています。

フルマラソンに多い心臓停止

ご興味のある方は、中島クリニックのHPに海外の論文がわかりやすく日本語でまとめてあります。http://www.nakajima-clinic.com/date/2015/10/


【理由2】フルマラソンは身体全体へのダメージも大きいです。

フルマラソンの場合、事前の練習に少なくとも3ヶ月以上は必要です。完走後の疲労も半端なく大きいです。Kanikamaの実感としては、疲れは1、2週間でも回復しますが、大会後1ヶ月くらいはなにかと体のケアが必要です。一般人にとっては時間的にも体力的にも生活への負担が思った以上に大きくなります。

実際、フルマラソンが身体に与える影響を研究した科学論文があり、ダメージは筋肉のみならず皮膚系、内臓系、血液系、免疫系などあらゆる組織にダメージが起き、低下したパラメータの回復だけでも2週間はかかると報告しているようです。

【理由3】 10km走、ハーフマラソンは身体への負荷がちょうどよい。

10kmやハーフマラソンならば、事前の練習も1ヶ月程度で行けます。ゴールした後も心地よい疲労で、結構体力が残っています。次の日からでも日常生活に戻れる良さがあります。

疲労の強さは、単純に距離に比例ではなく、20kmを超えると急激に疲労が加速するのがマラソンの特徴だからです。強すぎる負荷は運動素人には害となります。

従って、健康を目的とするなら、10kmからせいぜいハーフマラソンまでの、ほどほどの負荷(ちょうど良い疲労)が一番体に良いと実感しています。


【余談1:ジョギングのすごい効果】

kanikamaはジョギングを3年ほど続けた結果、高血圧の薬が要らなくなりました。

1.体重が約10kg落ちて、ほぼ適正体重に戻った。

2.日常の最高血圧が150~170もあったのが、正常値の130前後になった。

但し、走り始めてすぐに効果があったわけではありません。体重は 1年程度かけて少しづつ落ちました。日常血圧の減少は体重減少よりかなり遅れて、2年目くらいから下がりました。


【余談2:運動初心者がジョギングを続ける方法】

運動初心者のkanikamaは初めは1kmを走るのも正直しんどかったです。それが、3年間ジョギングを続けて、ついにフルマラソン(42.195km)も完走できるようになりました。そのコツをお話しします。

1)初めはゆっくりと心臓が苦しくないスピードで、つまり歩くようなスピードで走りましょう。kanikamaはジョギングを始めた頃、歩いている人に何度も追い抜かれました(笑)。

2)歩く程度の速さなら、あまり苦しくならないので、次第に自分でも驚くほどの長距離も走れるようになりびっくりします。この経験をするとジョギングが楽しくなります。

3) 先ずは10km走の大会を探して参加しましょう。制限時間内に完走を目指す練習を続ければ少しづつスピードも速くなります。


【余談3:運動初心者は、有名なランナーや監督が教える走り方を信じてはいけません】

kanikamaもそうでしたが、ジョギング初心者はモチベーションを上げるために、マラソンの雑誌や本をたくさん読みます。そこに書いてある走法をすぐにまねします。そして失敗します。

例えば、有名ランナーや専門家は必ず、「腰は落とさずに腰高のフォームで走りなさい」と指導しています。皆さんも知っていますよね。でもkanikamaは腰高のフォームで走ったらひざを痛めました。

そこで逆に、良くない走法とされている若干腰を落として、忍者走りのイメージで走るようにフォームを変えました。その方が自分には走りやすく膝へのダメージも少なかったからです。

そうしたら、長距離を走っても膝の痛みが出ず、故障もせず、調子よく走れるようになりました。フルマラソンも無事完走できました。

腰高走法は、あるレベル以上のランナーがより速い記録を狙うためには正しい走法と思いますが、ビギナーレベルのkanikamaには故障の原因となりました。


【kanikamaの結論です】

1.身体的特徴や筋力、体力は人それぞれです。皆に「正しい」走法はありません。人のまねをせず、自分に合った無理のない走り方は何かを考えながらいろいろ試しましょう。

2.フルマラソンよりも10km走やハーフマラソン。健康目的なら、ほどほどの距離がお勧めです。



2017年1月19日木曜日

なぜ日本人はマラソンが好きなのか?

日本人は昔から国民性としてマラソンが大好きです。

実は、メキシコの山岳に住み「走る民族」として有名な「タラウマラ族」と、日本人は祖先が同じです。つまり日本人はもともと走る民族としてのDNAを持っているのですが、そのお話は次々回で書きますのでそちらをご覧ください。
http://otonano-kagaku.blogspot.jp/2017/01/blog-post_23.html

今回は、走るためにとても重要な「日本人の精神面」のお話です。

日本人はマラソンを人生に例えることが好きです。選手が苦しさを耐えて我慢強く走り続ける姿を見て、自分達の生活や人生に重ね合わせ、深い共感と感動を覚える国民性があります。

今から53年前の東京オリンピック(1964)では、優勝したエチオピアのアベベ・ビキラ選手は、「裸足のアベベ」とか「走る哲学者」の愛称で日本で一躍有名になりました。アベベは海外よりも日本で特別人気が高いですが、それは彼の強さだけではありませんでした。まるで修行僧のように走るアベベの姿に人生と哲学を日本人は感じたからでした。

アベベ・ビキラ選手
1964年の東京オリンピック 毎日新聞社

そしてなによりも、この試合で銅メダルに輝いた日本の円谷幸吉選手の頑張りに日本人は皆深く感動しました。後年、円谷選手に起きた悲しい出来事とあまりに美しく悲しい遺書の内容に日本中の人が感動し、そして泣きました。

円谷選手の遺書について、ノーベル文学賞を受賞した川端康成は、「...美しくて、まことで、かなしいひびきだ...千万言も尽くせぬ哀切である」と語りました。

三島由紀夫も「...傷つきやすい、雄々しい、美しい自尊心...」と円谷選手の生き方をを絶賛しました(Wikipedia 参照)。 

遺書の全文は、以下のURLを参照。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%86%E8%B0%B7%E5%B9%B8%E5%90%89


円谷幸吉選手
1964年東京オリンピック
円谷幸吉メモリアルマラソン大会HPの写真

マラソンが日本人の心の中でより精神性を増し、特別な存在になったのはこの時からだと言っても過言ではないと思います。

しかしその当時は、マラソンは鍛えた選手のための競技でした。一般人は観戦して応援するスポーツでした。気軽に参加できるスポーツではなかったのです。

前回の東京オリンピックから約50年経った現在、社会は大きく変わりました。Kanikamaのように運動歴のない中高年から若いOLまで、ジョギングの流行が全国的に広まりました。

「一生に一度はフルマラソン完走」を目指す人が年々増えています。

故・円谷幸吉選手が現在の明るく華やかで、一般人が楽しんで参加するマラソン大会の様子を見たらさぞや驚くことでしょう。

このように時代が変わった現在でも、日本人はやはりマラソンを走りながら人生を考えます。それは今も昔も変わらない日本人の性格です。

目標を設定して精神的な達成感を得たいのならフルマラソンは申し分ないチャレンジです。興味があれば「人生に一度はフルマラソン」に皆さんもぜひ挑戦して下さい。

但し、 kanikamaと同様、運動素人の一般人は、無理は危険です。制限時間が長い、もしくは制限時間のない大会を探して、マイペースで走りましょう。

日本の多くのマラソン大会は、制限時間が6時間以内が多いです。運動素人の一般人には、そこそこ頑張って練習をしても、6時間制限の壁は結構きついです。

制限時間を長くして、多くの参加者がゆっくりと楽しんで走れる大会が増えて欲しいものです。ホノルルマラソンは制限時間がなく歩いても楽しめるので大人気ですね。

次回は、現代人の健康のための10km走、ハーフマラソンの勧めについてお話します。